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応用情報(AP) / マネジメント

プロジェクトマネジメントとは?PMBOK・JIS・WBSと管理活動を基礎から理解しよう

プロジェクトと定常業務の違いから、プロジェクトマネジメント、JIS Q 21500:2018、PMBOK、ステークホルダ、統合・スコープ・スケジュール・コスト・リスクマネジメント、WBSまで基礎から解説します。

読了時間:約15分
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はじめに

システム開発では、

新しいシステムを開発する
ネットワークを更改する
クラウドへシステムを移行する

といった仕事が行われます。

こうした仕事には、

  • 期限
  • 予算
  • 人員
  • 作業範囲
  • 品質
  • リスク

など、さまざまな制約があります。

ただ作業を進めるだけでは、

予定より遅れている……

予算を使いすぎた……

必要な機能が抜けていた……

担当者が足りない……

といった問題が発生する可能性があります。

そこで重要になるのが、

プロジェクトマネジメント

です。

今回は、

プロジェクト
    ↓
プロジェクトマネジメント
    ↓
JIS Q 21500
    ↓
PMBOK
    ↓
各マネジメント活動

という流れで学んでいきましょう。


1. そもそもプロジェクトとは?

**プロジェクト(Project)**とは、

特定の目的を達成するために行われる、開始と終了のある一時的な活動

です。

例えば、

新しいECサイトを開発する

という仕事を考えてみましょう。

この仕事には、

開始
 ↓
要件定義
 ↓
設計
 ↓
開発
 ↓
テスト
 ↓
リリース
 ↓
終了

という始まりと終わりがあります。

そして最終的には、

新しいECサイトを完成させる

という目的があります。

このような活動がプロジェクトです。


2. 定常業務とプロジェクトの違い

会社の仕事がすべてプロジェクトというわけではありません。

例えば、

毎月の給与計算
毎日のシステム監視
定期的なバックアップ
問い合わせ対応

などは、基本的に繰り返し行われます。

このような仕事を定常業務として考えることができます。

一方、

新しい給与システムを導入する
監視システムを刷新する
データセンターを移転する

などは、目的を達成したら終了します。

こちらはプロジェクトです。

項目 定常業務 プロジェクト
期間 継続的 開始と終了がある
内容 繰り返し 個別性がある
目的 業務を継続する 特定の成果を生み出す
例 システム監視 システム更改

🍯 「毎日サーバを監視する」は定常業務、「監視システムを新しくする」はプロジェクト、と考えると分かりやすいです。


3. プロジェクトには制約がある

プロジェクトでは、好きなだけ時間やお金を使えるわけではありません。

例えば、

納期:3月31日まで

予算:5,000万円

人員:10人

作るもの:
○ 認証機能
○ 商品検索
○ カート
○ 決済

といった条件があります。

そのため、

限られた条件の中で目的を達成する

必要があります。

ここで必要になるのがプロジェクトマネジメントです。


4. プロジェクトマネジメントとは

**プロジェクトマネジメント(Project Management)**とは、

プロジェクトの目標を達成するために、プロジェクト全体を計画・調整・管理すること

です。

例えば、

何を作る?
→ スコープ

いつまでに作る?
→ スケジュール

いくらかかる?
→ コスト

何が問題になりそう?
→ リスク

などを管理します。

つまりプロジェクトマネジメントは、

単なる進捗管理ではありません。

プロジェクト全体を見ながら、さまざまな要素を調整して目標達成へ導きます。


5. プロジェクトマネージャ

プロジェクトマネジメントで中心的な役割を持つのが、

プロジェクトマネージャ(Project Manager:PM)

です。

PMは、

プロジェクト全体
│
├─ スコープ
├─ スケジュール
├─ コスト
├─ 品質
├─ リスク
├─ メンバー
└─ ステークホルダ

などを見ながらプロジェクトを進めます。

もちろんPMがすべての作業を自分で行うわけではありません。

チームメンバーや顧客などとコミュニケーションを取り、

プロジェクト全体が目的へ向かって進めるよう調整する

ことが重要な役割です。


JIS Q 21500:2018

6. JIS Q 21500とは

プロジェクトマネジメントには、考え方を体系的に整理した規格やガイドがあります。

その一つが、

JIS Q 21500:2018

です。

これはプロジェクトマネジメントについての指針を示した日本産業規格です。

プロジェクトをどのように捉え、どのような活動を行うのかを体系的に整理するために利用できます。


7. 5つのプロセス群

JIS Q 21500:2018では、プロジェクトマネジメントのプロセスを大きく、

立上げ
 ↓
計画
 ↓
実行
 ↓
管理
 ↓
終結

という5つのプロセス群で整理します。

立上げ

プロジェクトを開始する段階です。

何のために行うのか?
誰が関係するのか?

などを明確にして、プロジェクトを開始します。

計画

目標を達成するための方法を決めます。

何をする?
いつする?
誰がする?
いくら必要?
どんなリスクがある?

などを計画します。

実行

作成した計画に基づいて、実際の作業を進めます。

管理

プロジェクトが計画どおり進んでいるかを確認し、必要に応じて修正します。

計画
 ↓
実績を確認
 ↓
差異を発見
 ↓
対応

というイメージです。

終結

成果物の引渡しなどを行い、プロジェクトを正式に終了します。


8. 5つのプロセス群は単純な一本道ではない

ここで注意したいのが、

立上げ
→ 計画
→ 実行
→ 管理
→ 終結

を一度ずつ行えば終わり、という意味ではないことです。

例えば実行中に、

予定より作業が遅れている

ことが分かったとします。

すると、

実行
 ↓
管理
 ↓
問題を発見
 ↓
計画を見直す
 ↓
再び実行

というように、プロセス同士が関係しながら進みます。


ステークホルダ

9. ステークホルダとは

**ステークホルダ(Stakeholder)**とは、

プロジェクトに影響を与える、またはプロジェクトから影響を受ける個人・組織などの利害関係者

です。

例えばシステム開発なら、

顧客
利用者
プロジェクトマネージャ
開発チーム
経営層
協力会社
ベンダ

など、さまざまなステークホルダが存在します。


10. なぜステークホルダ管理が必要なのか

例えば、新しい業務システムを開発するとします。

経営層は、

コストを減らしたい

と考えているかもしれません。

利用者は、

使いやすくしてほしい

と考えているかもしれません。

情報システム部門は、

セキュリティを高めたい

と考えているかもしれません。

つまり、

立場によってプロジェクトへの期待が違う

のです。

そのため、誰がどのような影響力・関心・要求を持っているのかを把握し、適切にコミュニケーションを取る必要があります。


PMBOK

11. PMBOKとは

プロジェクトマネジメントを学ぶとよく登場するのが、

PMBOK

です。

PMBOKは、

Project Management Body of Knowledge

の略です。

プロジェクトマネジメントに関する知識や考え方を体系的にまとめたものです。

PMBOKは、

PMI(Project Management Institute)

によってまとめられています。


12. PMBOKは「プロジェクトのやり方を固定するもの」ではない

PMBOKについて、

この手順どおりにやれば
すべてのプロジェクトが成功する!

というものだと考えるのは適切ではありません。

プロジェクトは、

  • 規模
  • 業界
  • 技術
  • 組織
  • 顧客
  • 契約

などによって状況が異なります。

そのためPMBOKは、

プロジェクトマネジメントについて考えるための知識体系

として理解するとよいでしょう。


プロジェクトマネジメントの活動

13. プロジェクトでは何を管理するのか

ここからは、代表的なマネジメント活動を見ていきます。

今回押さえるのは、

プロジェクト
│
├─ 統合マネジメント
├─ スコープマネジメント
├─ スケジュールマネジメント
├─ コストマネジメント
└─ リスクマネジメント

です。

それぞれ独立しているように見えますが、実際には互いに強く関係しています。


統合マネジメント

14. 統合マネジメントとは

**統合マネジメント(Integration Management)**とは、

プロジェクトに存在するさまざまな活動を全体として調整すること

です。

例えば顧客から、

この機能も追加してください!

と言われたとします。

「はい、追加します」だけでは済みません。

機能を追加すると、

スコープ
 ↓ 増える

作業量
 ↓ 増える

スケジュール
 ↓ 延びるかも

コスト
 ↓ 増えるかも

リスク
 ↓ 変化する

というように、ほかの管理項目にも影響します。

そこでプロジェクト全体への影響を確認して調整します。

これが統合マネジメントの重要な考え方です。


スコープマネジメント

15. スコープとは

**スコープ(Scope)**とは、

プロジェクトで実施する作業や成果物の範囲

です。

例えばECサイト開発で、

○ ログイン
○ 商品検索
○ カート
○ 決済

× レビュー
× ポイント

と決めたとします。

この、

どこまで作るのか

という範囲がスコープです。


16. スコープマネジメント

**スコープマネジメント(Scope Management)**とは、

プロジェクトで必要な作業を明確にし、必要以上の作業が勝手に増えないよう管理すること

です。

スコープが曖昧だと、

これも必要じゃない?

ついでにこれも追加しよう

この機能も欲しい

と作業が増え続ける可能性があります。

その結果、

作業増加
 ↓
スケジュール遅延
 ↓
コスト増加

につながります。


WBS

17. WBSとは

スコープを具体的な作業へ落とし込むときに重要なのが、

WBS(Work Breakdown Structure)

です。

WBSとは、

プロジェクトで必要な作業を階層的に細分化したもの

です。

例えばWebサイト開発なら、

Webサイト開発
│
├─ 要件定義
│   ├─ ユーザー要件整理
│   └─ 機能要件整理
│
├─ 設計
│   ├─ 画面設計
│   └─ DB設計
│
├─ 開発
│   ├─ フロントエンド
│   └─ バックエンド
│
└─ テスト
    ├─ 単体テスト
    └─ 結合テスト

のように分解します。


18. なぜWBSを作るのか

「Webサイトを作る」だけでは、

何をするの?
誰がするの?
何日かかるの?

が分かりません。

そこで作業を細かく分けます。

Webサイトを作る
 ↓
設計する
 ↓
画面を設計する
 ↓
ログイン画面を設計する

このように具体化すると、

  • 作業漏れを見つけやすい
  • 担当者を決めやすい
  • 工数を見積もりやすい
  • スケジュールを作りやすい

というメリットがあります。


19. WBSとスケジュールの関係

WBSで作業を洗い出したら、それぞれについて、

作業A:3日
作業B:5日
作業C:2日

のように期間や順序を考えられます。

つまり、

スコープ
 ↓
WBS
 ↓
作業を細分化
 ↓
期間・順序を決める
 ↓
スケジュール

という関係があります。

WBSは、スコープを具体的なスケジュールへつなげる重要な土台になります。


スケジュールマネジメント

20. スケジュールマネジメントとは

**スケジュールマネジメント(Schedule Management)**とは、

プロジェクトを期限までに完了させるために、作業の順序や期間、進捗などを管理すること

です。

例えば、

要件定義
 ↓
設計
 ↓
開発
 ↓
テスト
 ↓
リリース

という作業について、

  • いつ開始するか
  • いつ終了するか
  • どの作業が先か
  • どの作業を並行できるか

などを決めます。

代表的な手法には、

  • ガントチャート
  • アローダイアグラム
  • クリティカルパス

などがあります。

これらは次の記事で詳しく扱います。


コストマネジメント

21. コストマネジメントとは

**コストマネジメント(Cost Management)**とは、

プロジェクトを承認された予算内で完了させるためにコストを見積もり、管理すること

です。

プロジェクトには、

人件費
機器費
ソフトウェア費
クラウド利用料
外注費

など、さまざまなコストが発生します。

例えば、

予算:1,000万円

現在の支出:700万円

進捗:50%

なら、

「予算の70%を使ったのに、まだ50%しか終わっていない」

という問題に気付けます。


22. コストと進捗を一緒に見る

単純に、

予算内だから大丈夫!

とは限りません。

例えば、

予算:1,000万円
現在コスト:500万円

だけを見ると問題なさそうです。

しかし進捗が、

予定:70%
実績:30%

なら危険です。

そのため、

使ったお金と、実際にどれだけ仕事が進んだか

を一緒に評価する必要があります。

この考え方で重要なのが、

EVM(Earned Value Management)

です。

EVMについては「コストマネジメントで用いる手法」の記事で詳しく扱います。


リスクマネジメント

23. リスクとは

**リスク(Risk)**とは、

発生するとプロジェクトの目標に影響を与える不確実な事象や状態

です。

例えば、

担当者が退職するかもしれない

必要な機器の納品が遅れるかもしれない

新技術で想定外の問題が発生するかもしれない

などがあります。

リスクは「すでに発生した問題」とは違い、

まだ起きていない不確実なもの

として考えることがポイントです。


24. リスクマネジメントとは

**リスクマネジメント(Risk Management)**とは、

プロジェクトに存在するリスクを特定・分析し、必要な対応を行うこと

です。

例えば、

リスクを洗い出す
 ↓
発生確率を考える
 ↓
影響度を考える
 ↓
優先順位を決める
 ↓
対応を考える

という流れです。


25. 発生確率と影響度

リスクは、

発生確率
×
影響度

という2つの観点で考えると整理しやすくなります。

例えば、

リスク 発生確率 影響度 優先度
サーバ納品遅延 高 高 高
軽微な画面修正 高 低 中
大規模災害 低 非常に高 要検討

単に、

起こりやすいものだけ対応する

のではありません。

発生確率が低くても、発生した場合の影響が非常に大きければ対策が必要になることがあります。


26. マネジメント活動はつながっている

ここまで学んだ内容は、それぞれ独立しているわけではありません。

例えば、

顧客
「機能を追加したい」
        ↓
スコープ
「作業範囲が増える」
        ↓
WBS
「作業が増える」
        ↓
スケジュール
「納期に影響する」
        ↓
コスト
「人件費が増える」
        ↓
リスク
「遅延リスクが高くなる」

というようにつながっています。

そのため、

統合マネジメント

によってプロジェクト全体を見ながら調整する必要があります。


27. プロジェクトマネジメントの全体像

今回の内容を整理すると、

プロジェクト
│
├─ 開始と終了がある
├─ 目的がある
└─ 制約がある
        ↓
プロジェクトマネジメント
│
├─ JIS Q 21500:2018
│   ├─ 立上げ
│   ├─ 計画
│   ├─ 実行
│   ├─ 管理
│   └─ 終結
│
├─ ステークホルダ
│
├─ PMBOK
│
└─ マネジメント活動
    │
    ├─ 統合
    │    └─ 全体を調整
    │
    ├─ スコープ
    │    └─ 何をするか
    │         ↓
    │        WBS
    │
    ├─ スケジュール
    │    └─ いつするか
    │
    ├─ コスト
    │    └─ いくらかかるか
    │
    └─ リスク
         └─ 何が起こる可能性があるか

プロジェクトマネジメントを学ぶときは、

用語をバラバラに暗記するのではなく、プロジェクト全体を管理するためにそれぞれの活動が存在する

と考えることが重要です。


まとめ

この記事で覚えること

  • プロジェクトは特定の目的を達成するための開始と終了のある一時的な活動
  • 定常業務は継続的・反復的に行われる業務
  • プロジェクトマネジメントではプロジェクト全体を計画・調整・管理する
  • PMはプロジェクト全体を見ながら関係者や各活動を調整する
  • JIS Q 21500:2018では立上げ・計画・実行・管理・終結の5つのプロセス群で整理される
  • ステークホルダはプロジェクトへ影響を与える、または影響を受ける利害関係者
  • PMBOKはプロジェクトマネジメントに関する知識体系
  • 統合マネジメントでは各マネジメント活動をプロジェクト全体として調整する
  • スコープマネジメントではプロジェクトで実施する作業や成果物の範囲を管理する
  • WBSではプロジェクトに必要な作業を階層的に細分化する
  • スケジュールマネジメントでは作業の順序・期間・進捗などを管理する
  • コストマネジメントでは予算内でプロジェクトを完了できるようコストを管理する
  • リスクマネジメントでは将来発生する可能性のある不確実な事象を特定・分析・対応する
  • スコープ・スケジュール・コスト・リスクなどは互いに影響するため、全体を見て管理する必要がある

🍯 はちみつメモ

プロジェクトマネジメントは「進捗を見るだけ」ではなく、何を作るか(スコープ)、いつまでか(スケジュール)、いくらか(コスト)、何が起こりそうか(リスク)などをまとめて管理すること。WBSで仕事を具体化し、それぞれの変化がプロジェクト全体へどう影響するかを見るのが大切!