はじめに
コンピュータシステムでは、さまざまなデータを保存しています。
例えば、
- 顧客情報
- 売上データ
- 業務システムのデータベース
- ファイルサーバの共有ファイル
- 仮想マシンのデータ
などです。
これらのデータを保存する装置を**ストレージ(Storage)**と呼びます。
ストレージには、HDDやSSDなどがあります。
しかし、重要な業務システムでは、1台のディスクにすべてのデータを保存するだけでは十分とはいえません。
例えば、ディスクが故障した場合、データが読み出せなくなる可能性があります。
また、大量のデータを処理するシステムでは、ストレージの読み書き性能も重要です。
そこで利用されるのが、RAIDなどの技術です。
さらに、ストレージをネットワーク経由で利用する方法として、NASやSANがあります。
今回は、次の内容を学びます。
ストレージ関連技術
│
├─ RAID
│ ├─ RAID 0
│ ├─ RAID 1
│ ├─ RAID 2
│ ├─ RAID 3
│ ├─ RAID 4
│ ├─ RAID 5
│ ├─ RAID 6
│ │
│ └─ RAIDの組み合わせ
│ ├─ RAID 01
│ ├─ RAID 10
│ ├─ RAID 50
│ └─ RAID 60
│
└─ ストレージの接続形態
├─ NAS
└─ SAN
それでは、RAIDの基本から理解していきましょう。
1. RAIDとは
1-1. RAIDの基本
**RAID(Redundant Array of Independent Disks)**とは、
複数のディスクを組み合わせて、性能や耐障害性を向上させる技術です。
RAIDには、データをどのように分割・複製・保護するかによって、さまざまな方式があります。
例えば、4台のディスクを組み合わせて利用する場合を考えてみましょう。
RAID構成
┌────────────┐
│ RAID制御 │
└──────┬─────┘
│
┌────────┼────────┐
│ │ │
▼ ▼ ▼
ディスク1 ディスク2 ディスク3
RAIDを利用すると、複数のディスクを論理的にまとめて扱えます。
ただし、RAIDの種類によって目的や特徴は異なります。
1-2. RAIDで重要な3つの仕組み
RAIDを理解するうえで重要なのが、次の3つです。
① ストライピング
**ストライピング(Striping)**とは、データを複数のディスクに分割して保存することです。
例えば、データA・B・C・Dを2台のディスクに保存する場合です。
ディスク1 ディスク2
──────── ────────
A B
C D
複数のディスクで並行して読み書きできるため、性能向上が期待できます。
ただし、ストライピングだけではデータを保護できません。
② ミラーリング
**ミラーリング(Mirroring)**とは、同じデータを複数のディスクに保存することです。
ディスク1 ディスク2
──────── ────────
A A
B B
C C
片方のディスクが故障しても、もう片方からデータを読み出せます。
③ パリティ
**パリティ(Parity)**とは、ディスク障害時に失われたデータを復元するための冗長情報です。
例えば、データA・BからパリティPを計算して保存します。
データA
データB
│
▼
パリティP
一般的なRAIDのパリティ計算では、排他的論理和(XOR)などを利用します。
例えば、
A = 1
B = 0
P = A XOR B
= 1
という場合、Aが失われても、BとPからAを復元できます。
A = B XOR P
= 0 XOR 1
= 1
RAID 5やRAID 6では、このような冗長情報を利用してデータを保護します。
2. RAID 0
2-1. RAID 0とは
RAID 0は、ストライピングによってデータを複数のディスクに分散して保存する方式です。
主な目的は、読み書き性能の向上です。
RAID 0
ディスク1 ディスク2
──────── ────────
A B
C D
E F
複数のディスクへデータを分散するため、並列に読み書きできます。
2-2. RAID 0の特徴
メリット
- 複数ディスクを利用して性能を高められる
- ディスク容量を効率よく利用できる
- 冗長情報を保存する必要がない
デメリット
- ディスク故障に対する冗長性がない
- 1台でも故障すると、通常はRAID全体のデータを利用できなくなる
ここは非常に重要です。
RAID 0には耐障害性がありません。
RAIDという名前が付いていても、RAID 0は冗長化を行いません。
2-3. RAID 0の容量計算
1TBのディスクを4台使用する場合です。
1TB × 4台 = 4TB
利用可能容量は、単純化すると4TBです。
一般的に、同じ容量のディスクを使用する場合、
利用可能容量 = ディスク容量 × ディスク台数
となります。
※実際の利用可能容量は、管理領域などによって多少異なります。
3. RAID 1
3-1. RAID 1とは
RAID 1は、ミラーリングによって同じデータを複数のディスクに保存する方式です。
主な目的は、耐障害性の向上です。
RAID 1
ディスク1 ディスク2
──────── ────────
A A
B B
C C
同じデータを2台に保存する構成では、片方が故障しても、もう片方からデータを読み出せます。
3-2. RAID 1の特徴
メリット
- ディスク障害に強い
- 構成が比較的シンプル
- 複数ディスクからの読み出しで性能が向上する場合がある
デメリット
- 同じデータを複製するため、容量効率が低い
- 書き込み時には複数ディスクへの反映が必要
3-3. RAID 1の容量計算
1TBのディスクを2台使用する場合です。
ディスク1:1TB
ディスク2:1TB
利用可能容量:1TB
2台に同じデータを保存するため、利用可能容量は1TBです。
2台ミラーの場合、利用可能容量は物理容量合計の約半分になります。
4. RAID 2
4-1. RAID 2とは
RAID 2は、データをビット単位で分散し、誤り訂正符号を利用してデータを保護する方式です。
代表的な誤り訂正符号として、**ハミング符号(Hamming Code)**があります。
4-2. RAID 2の仕組み
RAID 2では、データを複数のディスクへ分散し、誤り訂正用の情報を別のディスクに保存します。
RAID 2
データ用ディスク 訂正符号用ディスク
D1 D2 D3 E1 E2
│ │ │ │ │
▼ ▼ ▼ ▼ ▼
データを分散 誤り訂正符号
ハミング符号などを利用して、データの誤りを検出・訂正します。
4-3. RAID 2の特徴
メリット
- 誤り訂正符号を利用してデータを保護できる
デメリット
- 構成が複雑
- 誤り訂正用のディスクが必要
- 現在ではほとんど利用されない
現在のHDDやSSDには内部で誤り訂正を行う仕組みがあるため、RAID 2が実際のシステムで利用されることは非常に少なくなっています。
🍯 試験対策
RAID 2 = ハミング符号による誤り訂正
と覚えましょう。
5. RAID 3
5-1. RAID 3とは
RAID 3は、データをバイト単位などの細かい単位で分散し、専用のパリティディスクを利用する方式です。
RAID 3
ディスク1 ディスク2 ディスク3 パリティ
──────── ──────── ──────── ────────
A1 A2 A3 P1
B1 B2 B3 P2
C1 C2 C3 P3
データ用ディスクに情報を分散し、専用のパリティディスクへ冗長情報を保存します。
5-2. RAID 3の特徴
メリット
- 1台のディスク障害に対応できる
- 大きな連続データの読み書きに適した構成
デメリット
- 小さな読み書きでも複数のデータディスクが動作する
- 専用パリティディスクを利用する
- 現在ではあまり利用されない
RAID 3では、データディスクが連携して動作するため、独立した小さなI/O要求を多数処理する用途には向きません。
6. RAID 4
6-1. RAID 4とは
RAID 4は、データをブロック単位で分散し、専用のパリティディスクを利用する方式です。
RAID 4
ディスク1 ディスク2 ディスク3 パリティ
──────── ──────── ──────── ────────
A B C P1
D E F P2
G H I P3
RAID 3との大きな違いは、データを分割する単位です。
| RAID | データの分散単位 |
|---|---|
| RAID 3 | バイト単位など |
| RAID 4 | ブロック単位 |
6-2. RAID 4の特徴
メリット
- 1台のディスク障害に対応できる
- 異なるデータブロックの読み出しを並行して実行しやすい
デメリット
- パリティディスクに書き込みが集中しやすい
- パリティディスクが性能上のボトルネックになる場合がある
この問題を改善する考え方が、次に紹介するRAID 5です。
7. RAID 5
7-1. RAID 5とは
RAID 5は、データとパリティを複数のディスクへ分散して保存する方式です。
RAID 4では専用のパリティディスクを利用していました。
一方、RAID 5では、パリティを特定のディスクに固定せず分散して保存します。
RAID 5
ディスク1 ディスク2 ディスク3 ディスク4
──────── ──────── ──────── ────────
A B C P1
D E P2 F
G P3 H I
P4 J K L
P1〜P4がパリティです。
パリティを複数ディスクに分散することで、専用パリティディスクへの負荷集中を避けます。
7-2. RAID 5の特徴
メリット
- 1台のディスク障害に対応できる
- RAID 1より容量効率が高い場合が多い
- パリティを分散して保存する
デメリット
- 書き込み時にパリティの更新が必要
- 障害発生後のデータ再構築に時間がかかる場合がある
- 再構築中に別のディスクが故障すると、データを失う可能性がある
特に重要なのは、RAID 5が耐えられるディスク障害は1台までという点です。
7-3. RAID 5の容量計算
RAID 5では、同容量のディスクを使用する場合、1台分に相当する容量がパリティに使われます。
例えば、1TBのディスクを4台使用すると、
ディスク容量:1TB
ディスク台数:4台
利用可能容量
= (4 - 1) × 1TB
= 3TB
となります。
一般式は次のとおりです。
RAID 5の利用可能容量 = (N − 1) × C
- N:ディスク台数
- C:ディスク1台の容量
※同容量ディスクを使用した場合の概算です。
8. RAID 6
8-1. RAID 6とは
RAID 6は、2種類の独立したパリティ情報を分散して保存する方式です。
RAID 5では1台のディスク障害に対応できました。
一方、RAID 6では、同時に2台のディスクが故障してもデータを復元できるように設計されています。
RAID 6
ディスク1 ディスク2 ディスク3 ディスク4
──────── ──────── ──────── ────────
A B P1 Q1
C P2 Q2 D
P3 Q3 E F
Q4 G H P4
PとQは、異なる方法で計算される冗長情報を表しています。
※図は仕組みを理解するための模式図です。実際のデータ・パリティ配置は実装によって異なります。
8-2. RAID 6の特徴
メリット
- 2台のディスク障害に対応できる
- RAID 5より高い耐障害性を確保できる
- 大容量ストレージで利用されることがある
デメリット
- 2台分に相当する容量が冗長情報に使われる
- パリティ計算が複雑
- 書き込み性能に影響する場合がある
8-3. RAID 6の容量計算
1TBのディスクを5台使用する場合です。
ディスク容量:1TB
ディスク台数:5台
利用可能容量
= (5 - 2) × 1TB
= 3TB
一般式は次のとおりです。
RAID 6の利用可能容量 = (N − 2) × C
RAID 5との違いを覚えましょう。
RAID 5
→ 1台分を冗長情報に使用
RAID 6
→ 2台分を冗長情報に使用
9. RAID 0〜6の比較
ここまでの内容を一覧表にまとめます。
| RAID | 主な仕組み | 最小ディスク数 | 耐えられるディスク障害 |
|---|---|---|---|
| RAID 0 | ストライピング | 2台 | 0台 |
| RAID 1 | ミラーリング | 2台 | 2台ミラーでは1台 |
| RAID 2 | ビット単位分散+誤り訂正符号 | 実装による | 符号設計による |
| RAID 3 | 細粒度ストライピング+専用パリティ | 3台 | 1台 |
| RAID 4 | ブロック単位ストライピング+専用パリティ | 3台 | 1台 |
| RAID 5 | ブロック単位ストライピング+分散パリティ | 3台 | 1台 |
| RAID 6 | ブロック単位ストライピング+二重パリティ | 4台 | 2台 |
※RAID 2の必要ディスク数や訂正能力は、データディスク数・符号方式によって異なります。
🍯 RAIDの覚え方
RAID 0
→ 分散するだけ
RAID 1
→ 同じデータを複製
RAID 2
→ ハミング符号
RAID 3
→ 細かく分散+専用パリティ
RAID 4
→ ブロック分散+専用パリティ
RAID 5
→ ブロック分散+パリティ分散
RAID 6
→ RAID 5を二重パリティに強化
10. RAIDの組み合わせ
RAIDは、複数の方式を組み合わせることもできます。
このような構成を**ネストRAID(Nested RAID)**と呼びます。
代表的なものとして、
- RAID 01
- RAID 10
- RAID 50
- RAID 60
があります。
11. RAID 01
11-1. RAID 01とは
**RAID 01(RAID 0+1)**は、RAID 0で構成したディスク群を、RAID 1でミラーリングする方式です。
つまり、
ストライピングしたグループをミラーリングする構成です。
RAID 01
│
ミラーリング
┌─────┴─────┐
│ │
▼ ▼
RAID 0群A RAID 0群B
│ │
┌──┴──┐ ┌──┴──┐
▼ ▼ ▼ ▼
D1 D2 D3 D4
RAID 0群AとRAID 0群Bに同じデータを保存します。
11-2. RAID 01の特徴
メリット
- ストライピングによる性能向上が期待できる
- ミラーリングによって冗長性を確保できる
デメリット
- 容量効率が約50%になる
- ディスク障害の組み合わせによっては、2台の故障でデータを失う場合がある
例えば、RAID 0群Aで1台が故障すると、群A全体が利用できなくなります。
その後、RAID 0群Bでも1台が故障すると、データを失う可能性があります。
12. RAID 10
12-1. RAID 10とは
**RAID 10(RAID 1+0)**は、RAID 1で構成したミラーリングの組を、RAID 0でストライピングする方式です。
つまり、
ミラーリングしたグループにデータを分散する構成です。
RAID 10
│
ストライピング
┌─────┴─────┐
│ │
▼ ▼
RAID 1群A RAID 1群B
│ │
┌──┴──┐ ┌──┴──┐
▼ ▼ ▼ ▼
D1 D2 D3 D4
RAID 01と似ていますが、組み合わせる順序が異なります。
12-2. RAID 10の特徴
メリット
- 読み書き性能と耐障害性の両立を目指せる
- ディスク障害からの再構築が比較的シンプル
- 異なるミラー組であれば複数台の故障に耐えられる場合がある
デメリット
- 容量効率が約50%
- 多くのディスクが必要
12-3. RAID 01とRAID 10の違い
ここは応用情報技術者試験でも重要です。
| 比較項目 | RAID 01 | RAID 10 |
|---|---|---|
| 構成 | RAID 0をミラーリング | RAID 1をストライピング |
| 最小ディスク数 | 4台 | 4台 |
| 容量効率 | 約50% | 約50% |
| 障害時の影響 | RAID 0群単位で影響 | ミラー組単位で影響 |
| 耐障害性 | 故障の組み合わせに依存 | 故障の組み合わせに依存 |
| 一般的な評価 | RAID 10より不利になりやすい | RAID 01より有利になりやすい |
具体例
4台のディスクでRAID 10を構成します。
RAID 1群A
├─ ディスク1
└─ ディスク2
RAID 1群B
├─ ディスク3
└─ ディスク4
ディスク1とディスク3が故障しても、それぞれのミラー組に正常なディスクが残るため、データを利用できます。
一方、ディスク1とディスク2が故障すると、RAID 1群Aのデータを失います。
つまり、RAID 10は常に2台の故障に耐えられるわけではありません。
13. RAID 50
13-1. RAID 50とは
**RAID 50(RAID 5+0)**は、複数のRAID 5グループをRAID 0でストライピングする方式です。
RAID 50
│
ストライピング
┌─────┴─────┐
│ │
▼ ▼
RAID 5群A RAID 5群B
│ │
┌──┼──┐ ┌──┼──┐
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
D1 D2 D3 D4 D5 D6
各RAID 5グループには、分散パリティが存在します。
13-2. RAID 50の特徴
- RAID 5の耐障害性とストライピングを組み合わせる
- RAID 5単体より性能向上を期待できる場合がある
- 各RAID 5グループで1台までの故障に対応できる
例えば、2つのRAID 5グループがある場合、それぞれのグループで1台ずつ故障しても、データを維持できます。
しかし、同じグループで2台故障すると、データを失う可能性があります。
14. RAID 60
14-1. RAID 60とは
**RAID 60(RAID 6+0)**は、複数のRAID 6グループをRAID 0でストライピングする方式です。
RAID 60
│
ストライピング
┌─────┴─────┐
│ │
▼ ▼
RAID 6群A RAID 6群B
│ │
┌────┼────┐ ┌────┼────┐
▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼
複数ディスク 複数ディスク
各RAID 6グループでは、2台までのディスク障害に対応できます。
14-2. RAID 60の特徴
- RAID 6の耐障害性とストライピングを組み合わせる
- 各RAID 6グループで2台までの故障に対応できる
- RAID 50より高い耐障害性を確保できる場合がある
- 冗長情報の容量やパリティ計算の負担が増える
15. RAIDの容量計算まとめ
ここまで登場したRAIDの容量を比較しましょう。
同じ容量のディスクを使用する場合、代表的な構成の概算容量は次のようになります。
| RAID | 利用可能容量 |
|---|---|
| RAID 0 | N × C |
| RAID 1(2台ミラー) | C |
| RAID 5 | (N − 1) × C |
| RAID 6 | (N − 2) × C |
| RAID 01 | N × C ÷ 2 |
| RAID 10(2台ミラーの組) | N × C ÷ 2 |
| RAID 50 | (N − G) × C |
| RAID 60 | (N − 2G) × C |
- N:ディスクの総台数
- C:ディスク1台の容量
- G:RAID 5またはRAID 6のグループ数
※RAID 50・60は、各グループが必要な最小台数を満たす構成を想定しています。
15-1. 容量計算の練習問題
問題
1TBのディスクを6台使用する場合、RAID 0・RAID 5・RAID 6の利用可能容量はいくらでしょうか?
解答
RAID 0
6 × 1TB = 6TB
RAID 5
(6 − 1) × 1TB = 5TB
RAID 6
(6 − 2) × 1TB = 4TB
| RAID | 利用可能容量 |
|---|---|
| RAID 0 | 6TB |
| RAID 5 | 5TB |
| RAID 6 | 4TB |
このように、冗長性を高めるほど、データ保護のために使用する容量が増える場合があります。
16. RAIDとバックアップの違い
ここで、非常に重要なポイントを確認しましょう。
RAIDはバックアップの代わりにはなりません。
RAIDによってディスク障害に備えることはできます。
しかし、次のような問題には十分に対応できない場合があります。
- 誤ってファイルを削除した
- ランサムウェアによってデータが暗号化された
- アプリケーションの不具合でデータが破損した
- 火災によってストレージ全体が故障した
例えば、RAID 1では同じデータを2台に保存しています。
しかし、利用者が誤ってファイルを削除すると、その削除操作も両方のディスクへ反映されます。
RAID 1
ディスク1:ファイル削除
ディスク2:ファイル削除
そのため、重要なデータはRAIDに加えて、別の場所へのバックアップなどを組み合わせて保護します。
🍯 RAIDは「ディスク故障への備え」、バックアップは「失ったデータを過去の状態から復元するための備え」です。
17. ストレージの接続形態
ここまでは、複数のディスクをどのように組み合わせるかを学びました。
次は、ストレージをコンピュータへどのように接続するかを考えます。
代表的な接続形態には、次のようなものがあります。
- DAS
- NAS
- SAN
今回の中心テーマはNASとSANですが、違いを理解するためにDASも簡単に紹介します。
18. DAS
18-1. DASとは
**DAS(Direct Attached Storage)**とは、サーバやコンピュータに直接接続するストレージです。
例えば、サーバに内蔵されたHDDや、直接接続された外部ストレージなどが該当します。
DAS構成
┌──────────┐
│ サーバ │
└────┬─────┘
│
直接接続
│
▼
┌──────────┐
│ストレージ│
└──────────┘
特徴
- 構成が比較的シンプル
- ネットワークストレージ用の設備が不要
- 接続先のコンピュータとの関係が強い
ただし、DASでも接続方式や製品によって構成は異なります。
19. NAS
19-1. NASとは
**NAS(Network Attached Storage)**とは、
ネットワークに接続して、複数のコンピュータからファイル単位で利用できるストレージです。
NASは、ファイル共有を提供するストレージ装置やシステムを指します。
19-2. NASの仕組み
NAS構成
┌──────────────┐
│ LAN │
└──────┬───────┘
│
┌────────┼────────┐
│ │ │
▼ ▼ ▼
PC-A PC-B NAS
│
▼
ファイル
NASでは、ネットワーク経由で共有フォルダなどへアクセスします。
例えば、
共有フォルダ
├─ 営業資料
├─ 会議資料
└─ 設計書
といったファイルを、複数の利用者が共有できます。
19-3. NASで利用されるプロトコル
NASでは、ファイル共有のために次のようなプロトコルが利用されます。
| プロトコル | 正式名称 | 特徴 |
|---|---|---|
| SMB | Server Message Block | Windows系で広く利用されるファイル共有プロトコル |
| NFS | Network File System | UNIX・Linux系で広く利用されるファイル共有プロトコル |
例えば、Windowsの共有フォルダへアクセスする場合、SMBが利用されることがあります。
Linuxでは、NFSを利用して共有ディレクトリをマウントする構成があります。
19-4. NASのメリット
① ファイル共有が簡単
複数のコンピュータから同じファイルへアクセスできます。
② データを集中管理できる
ファイルをNASへ集約することで、アクセス権限やバックアップなどを管理しやすくなります。
③ 導入しやすい製品が多い
比較的小規模な環境から利用できる製品もあります。
19-5. NASのデメリット
① ネットワークの影響を受ける
ファイルの読み書きはネットワークを介して行われます。
そのため、通信帯域や遅延の影響を受けます。
② NASの障害が複数利用者へ影響する
NASが停止すると、共有ファイルを利用できなくなる可能性があります。
③ 大量のI/O処理では設計が重要
高負荷なデータベースなどで利用する場合、ファイル共有プロトコルやストレージ性能を十分に検討する必要があります。
20. SAN
20-1. SANとは
**SAN(Storage Area Network)**とは、
サーバとストレージを接続するための専用または論理的に分離されたネットワークです。
SANでは、一般的にブロック単位でストレージへアクセスします。
20-2. SANの仕組み
SAN構成
┌────────┐ ┌────────┐
│サーバA │ │サーバB │
└───┬────┘ └────┬───┘
│ │
└──────┬──────┘
│
SANネットワーク
│
┌──────┴──────┐
│ │
▼ ▼
ストレージA ストレージB
サーバはSAN経由でストレージの論理ボリュームなどへアクセスします。
一般的なブロックSANでは、サーバ側がファイルシステムを管理します。
20-3. SANの代表的な方式
SANには、主に次のような方式があります。
① FC-SAN
**FC-SAN(Fibre Channel SAN)**とは、Fibre Channelを利用して構築するSANです。
サーバ
│
▼
FCスイッチ
│
▼
ストレージ
Fibre Channelは、ストレージ接続などで利用される高速な通信技術です。
② IP-SAN
IP-SANとは、IPネットワークを利用して構築するSANです。
代表的な技術にiSCSIがあります。
**iSCSI(Internet Small Computer Systems Interface)**は、SCSIコマンドをTCP/IPネットワーク上で転送する技術です。
サーバ
│
▼
IPネットワーク
│
▼
iSCSI対応ストレージ
既存のEthernet技術を活用してSANを構築できます。
ただし、性能や安定性を確保するためには、ネットワーク設計が重要です。
20-4. SANのメリット
① ブロック単位でストレージを利用できる
サーバからは、SAN上のストレージをブロックデバイスとして扱えます。
② 高性能なストレージ環境を構築できる
用途に応じて高速な通信技術や高性能ストレージを組み合わせられます。
③ 複数サーバのストレージを集約できる
複数のサーバから共通のストレージ基盤を利用する構成を実現できます。
ただし、複数サーバが同じボリュームへ同時に書き込む場合には、クラスタ対応ファイルシステムなどの適切な制御が必要です。
20-5. SANのデメリット
- 専門的な設計・運用知識が必要
- 構成によっては導入コストが高くなる
- ストレージネットワークの障害対策が必要
また、SANを利用するだけで必ずNASより高速になるわけではありません。
実際の性能は、ストレージ装置・ネットワーク・プロトコル・アクセス特性などによって異なります。
21. NASとSANの違い
ここは特に重要です。
NASはファイル単位、SANは一般的にブロック単位でアクセスするという違いがあります。
21-1. NASのアクセス方法
NASでは、利用者やアプリケーションがファイルを指定してアクセスします。
クライアント
│
│ ファイルを要求
▼
NAS
│
▼
共有ファイル
例えば、
会議資料.pdf
というファイルを開くイメージです。
21-2. SANのアクセス方法
SANでは、サーバがストレージのブロック領域へアクセスします。
サーバ
│
│ ブロックI/O
▼
SAN
│
▼
論理ボリューム
サーバはSAN上の論理ボリュームを利用して、ファイルシステムなどを構築できます。
21-3. NASとSANの比較表
| 比較項目 | NAS | SAN |
|---|---|---|
| 正式名称 | Network Attached Storage | Storage Area Network |
| 主なアクセス単位 | ファイル単位 | ブロック単位 |
| 代表的なプロトコル | SMB、NFS | Fibre Channel、iSCSI |
| 主な利用者 | PC・サーバ | 主にサーバ |
| ファイルシステム管理 | NAS側 | 一般的にサーバ側 |
| 主な用途 | ファイル共有 | DB、仮想化基盤など |
| 構成 | 比較的シンプルなものも多い | 専用設計が必要になる場合がある |
22. RAID・NAS・SANの関係
最後に、今回学んだ技術の関係を整理しましょう。
RAID・NAS・SANは、同じ種類の技術ではありません。
| 技術 | 主な目的 |
|---|---|
| RAID | 複数ディスクを組み合わせて性能や耐障害性を高める |
| NAS | ネットワーク経由でファイルを共有する |
| SAN | サーバとストレージをネットワークで接続する |
例えば、NASの内部でRAIDを構成することがあります。
利用者
│
▼
ネットワーク
│
▼
┌────────────┐
│ NAS │
│ │
│ RAID 5 │
│ │
│ D1 D2 D3 D4│
└────────────┘
同様に、SANで接続するストレージ装置の内部でもRAIDが利用されることがあります。
サーバ
│
▼
SANネットワーク
│
▼
ストレージ装置
│
▼
RAID構成
つまり、
RAIDはディスクの構成技術、NASとSANはストレージを利用するための接続・提供形態
と整理できます。
まとめ
この記事で覚えること
- RAIDは、複数のディスクを組み合わせて性能や耐障害性を向上させる技術
- ストライピングは、データを複数ディスクへ分散して保存すること
- ミラーリングは、同じデータを複数ディスクへ保存すること
- パリティは、障害時にデータを復元するための冗長情報
- RAID 0は、ストライピングのみで冗長性がない
- RAID 1は、ミラーリングによってデータを保護する
- RAID 2は、ハミング符号などの誤り訂正符号を利用する
- RAID 3は、細かい単位のストライピングと専用パリティを利用する
- RAID 4は、ブロック単位のストライピングと専用パリティを利用する
- RAID 5は、分散パリティを利用し、1台のディスク障害に対応する
- RAID 6は、二重パリティを利用し、2台のディスク障害に対応する
- RAID 01は、RAID 0のグループをミラーリングする
- RAID 10は、RAID 1のグループをストライピングする
- RAID 50は、RAID 5のグループをストライピングする
- RAID 60は、RAID 6のグループをストライピングする
- NASは、ネットワーク経由でファイル単位のアクセスを提供する
- SANは、一般的にブロック単位でストレージへアクセスするためのネットワーク
- RAIDはバックアップの代わりにはならない
🍯 はちみつメモ
RAIDは「複数のディスクをどう組み合わせるか」、NASとSANは「ストレージをどう利用するか」という違いがあるよ!
RAID 0は分散、RAID 1は複製、RAID 5は1台分のパリティ、RAID 6は2台分のパリティと覚えよう。
RAID 10は「ミラーリングしてからストライピング」。RAID 01との違いも重要!
そして、NASはファイル単位、SANはブロック単位。この違いは応用情報技術者試験でもしっかり押さえておこう!