はじめに
企業が事業を続けるためには、売上を増やすだけでは不十分です。
例えば、はちみつ屋さんの売上が年間1,000万円だったとします。
一見すると順調に見えますが、材料費や人件費などに1,200万円かかっていたらどうでしょうか。
売上はあっても、200万円の赤字です。
また、利益が出ていても、手元に現金がなければ仕入代金を支払えなくなる可能性があります。
そこで重要になるのが企業会計です。
企業会計とは、企業のお金の流れや財政状態、経営成績を記録・分析する仕組みです。
今回は、応用情報技術者試験で重要な次の4つを学びます。
- 財務諸表分析
- 損益分析
- 棚卸資産評価
- 減価償却
特に計算問題では、公式に数値を当てはめるだけでなく、何を求めているのかを理解することが重要です。
1. 企業会計の基礎
1-1. 企業会計とは
**企業会計(Corporate Accounting)**とは、企業の経済活動を金額で記録し、経営状況を明らかにする仕組みです。
企業会計は、大きく次の2つに分類できます。
| 分類 | 主な目的 | 利用者 |
|---|---|---|
| 財務会計 | 企業の経営状況を外部に報告する | 株主・金融機関・取引先など |
| 管理会計 | 経営上の意思決定に活用する | 経営者・管理者など |
例えば、はちみつ屋さんで考えると、
- 銀行に決算書を提出する:財務会計
- 新商品を何個売れば黒字になるか計算する:管理会計
という違いがあります。
2. 財務諸表とは
2-1. 財務諸表の役割
**財務諸表(Financial Statements)**とは、企業の財政状態や経営成績などを表す書類です。
代表的なものは次の3つです。
| 財務諸表 | 略称 | 分かること |
|---|---|---|
| 貸借対照表 | B/S | 企業の財政状態 |
| 損益計算書 | P/L | 一定期間の経営成績 |
| キャッシュフロー計算書 | C/F | 現金及び現金同等物の増減 |
これらは、それぞれ異なる視点から企業の状態を表しています。
3. 貸借対照表(B/S)
3-1. 貸借対照表とは
**貸借対照表(Balance Sheet:B/S)**とは、ある時点における企業の資産・負債・純資産を表す財務諸表です。
例えば、3月31日時点で、
- 現金がいくらあるか
- 商品をどれくらい保有しているか
- 借入金がいくらあるか
などが分かります。
3-2. 貸借対照表の基本構造
┌────────────────┬────────────────┐
│ 資産 │ 負債 │
│ │ │
│ 現金 │ 借入金 │
│ 売掛金 │ 買掛金 │
│ 商品 │ │
│ 建物 ├────────────────┤
│ 設備 │ 純資産 │
│ │ │
│ │ 資本金など │
└────────────────┴────────────────┘
貸借対照表では、次の関係が必ず成立します。
資産 = 負債 + 純資産
3-3. 資産とは
**資産(Assets)**とは、企業が保有する経済的価値のあるものです。
例えば、
- 現金
- 預金
- 売掛金
- 商品
- 建物
- 機械設備
などがあります。
資産は主に次の2つに分類されます。
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 流動資産 | 通常の営業循環過程にあるものや、原則として1年以内に現金化されるもの | 現金・売掛金・商品 |
| 固定資産 | 長期間保有・使用するものなど | 建物・機械設備 |
3-4. 負債とは
**負債(Liabilities)**とは、企業が将来支払う義務などを表します。
例えば、
- 借入金
- 買掛金
- 未払金
などです。
負債も、主に流動負債と固定負債に分類されます。
3-5. 純資産とは
**純資産(Net Assets)**とは、資産から負債を差し引いたものです。
純資産 = 資産 − 負債
例えば、
- 資産:1,000万円
- 負債:400万円
の場合、
純資産 = 1,000 − 400
= 600万円
となります。
ただし、純資産がすべて現金として保有されているわけではありません。
4. 損益計算書(P/L)
4-1. 損益計算書とは
**損益計算書(Profit and Loss Statement:P/L)**とは、一定期間の売上・費用・利益を表す財務諸表です。
貸借対照表が「ある時点」の状態を表すのに対し、損益計算書は「一定期間」の経営成績を表します。
4-2. 損益計算書の基本構造
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売上高 | 1,000万円 |
| 売上原価 | 600万円 |
| 売上総利益 | 400万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 250万円 |
| 営業利益 | 150万円 |
| 営業外収益 | 20万円 |
| 営業外費用 | 10万円 |
| 経常利益 | 160万円 |
| 特別利益 | 0万円 |
| 特別損失 | 10万円 |
| 税引前当期純利益 | 150万円 |
| 法人税等 | 45万円 |
| 当期純利益 | 105万円 |
※説明用の簡略化した例です。
4-3. 売上総利益
**売上総利益(Gross Profit)**とは、売上高から売上原価を差し引いた利益です。
売上総利益 = 売上高 − 売上原価
例えば、
1,000 − 600 = 400万円
となります。
売上総利益は、**粗利益(粗利)**とも呼ばれます。
4-4. 営業利益
**営業利益(Operating Profit)**とは、本業によって得られた利益です。
営業利益
= 売上総利益 − 販売費及び一般管理費
例えば、
400 − 250 = 150万円
となります。
4-5. 経常利益
**経常利益(Ordinary Profit)**とは、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益です。
経常利益
= 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用
例えば、
150 + 20 − 10 = 160万円
となります。
4-6. 当期純利益
**当期純利益(Net Income)**とは、一定期間の最終的な利益です。
基本的には、税引前当期純利益から法人税等を差し引いて求めます。
当期純利益
= 税引前当期純利益 − 法人税等
※税効果会計などを含む場合は、法人税等調整額なども考慮します。
5. キャッシュフロー計算書(C/F)
5-1. キャッシュフロー計算書とは
**キャッシュフロー計算書(Cash Flow Statement)**とは、一定期間における現金及び現金同等物の増減を表す財務諸表です。
重要なのは、利益と現金の増減は一致しない場合があるという点です。
例えば、はちみつ屋さんが商品を100万円分販売したとします。
しかし、代金の支払いが翌月であれば、販売時点では現金が増えません。
このような違いを把握するためにキャッシュフロー計算書を利用します。
5-2. キャッシュフローの3分類
| 分類 | 内容 | 例 |
|---|---|---|
| 営業活動によるCF | 本業に関係する現金の流れ | 商品販売による入金 |
| 投資活動によるCF | 設備投資などによる現金の流れ | 機械設備の購入 |
| 財務活動によるCF | 資金調達や返済による現金の流れ | 借入・借入金返済 |
6. 財務諸表分析とは
6-1. 財務諸表分析の目的
**財務諸表分析(Financial Statement Analysis)**とは、財務諸表の数値を利用して、企業の収益性や安全性などを分析することです。
主に次の観点があります。
| 分析 | 確認すること |
|---|---|
| 収益性分析 | 効率よく利益を生み出しているか |
| 安全性分析 | 財務的に安定しているか |
| 効率性分析 | 資産を効率的に利用しているか |
| 成長性分析 | 売上や利益が成長しているか |
7. 資本利益率
7-1. 資本利益率とは
資本利益率とは、企業が保有・利用する資本に対して、どれくらい利益を生み出しているかを表す指標です。
基本的な考え方は次のとおりです。
資本利益率(%)
= 利益 ÷ 資本 × 100
ただし、どの利益と資本を使うかによって指標が異なります。
代表的なものが、
- ROE
- ROA
- ROI
です。
8. ROE(自己資本利益率)
8-1. ROEとは
**ROE(Return on Equity)**とは、自己資本に対して、どれくらい当期純利益を生み出したかを表す指標です。
日本語では自己資本利益率と呼ばれます。
8-2. ROEの公式
ROE(%)
= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100
厳密な財務分析では、分母に期首・期末の平均自己資本を利用することがあります。
8-3. ROEの計算例
はちみつ屋さんの財務状況が次のとおりだったとします。
- 当期純利益:120万円
- 自己資本:600万円
この場合、
ROE
= 120 ÷ 600 × 100
= 20%
となります。
つまり、自己資本600万円に対して、120万円の利益を生み出したことになります。
8-4. ROEの注意点
一般にROEが高いほど、自己資本を効率的に利用していると評価できます。
ただし、借入金を増やして自己資本の割合を小さくした場合にも、ROEが高くなることがあります。
そのため、ROEだけで企業の健全性を判断することはできません。
9. ROA(総資産利益率)
9-1. ROAとは
**ROA(Return on Assets)**とは、企業の総資産に対して、どれくらい利益を生み出したかを表す指標です。
日本語では総資産利益率と呼ばれます。
9-2. ROAの公式
ROA(%)
= 利益 ÷ 総資産 × 100
ROAでは、分析目的に応じて当期純利益や事業利益などを使用します。
試験問題では、指定された利益の種類を確認することが重要です。
9-3. ROAの計算例
- 当期純利益:120万円
- 総資産:1,200万円
の場合、
ROA
= 120 ÷ 1,200 × 100
= 10%
となります。
10. ROI(投資利益率)
10-1. ROIとは
**ROI(Return on Investment)**とは、投資した金額に対して、どれくらい利益を得られたかを表す指標です。
日本語では投資利益率と呼ばれます。
10-2. ROIの公式
ROI(%)
= 投資によって得られた利益 ÷ 投資額 × 100
ここでいう利益は、投資による収益から関連費用を差し引いたものです。
問題によって利益の定義が異なるため、条件を確認しましょう。
10-3. ROIの計算例
はちみつ屋さんが新しい製造機械を導入したとします。
- 投資額:200万円
- 投資による追加収益:300万円
- 投資に関連する追加費用:240万円
この場合、投資による利益は、
300 − 240 = 60万円
です。
ROIは、
ROI
= 60 ÷ 200 × 100
= 30%
となります。
11. ROE・ROA・ROIの違い
| 指標 | 正式名称 | 分母 | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| ROE | Return on Equity | 自己資本 | 株主資本に対する収益性 |
| ROA | Return on Assets | 総資産 | 資産全体の収益性 |
| ROI | Return on Investment | 投資額 | 投資の収益性 |
覚え方は次のとおりです。
- ROE:自己資本
- ROA:総資産
- ROI:投資額
12. 売上高利益率
12-1. 売上高利益率とは
売上高利益率とは、売上高に対して利益がどれくらいあるかを表す指標です。
売上高利益率(%)
= 利益 ÷ 売上高 × 100
例えば、
- 売上高:1,000万円
- 営業利益:150万円
の場合、
売上高営業利益率
= 150 ÷ 1,000 × 100
= 15%
となります。
13. 安全性指標
13-1. 安全性分析とは
安全性分析とは、企業が借入金や買掛金などの支払義務に対応できるか、財務的に安定しているかを分析することです。
代表的な指標は次のとおりです。
- 流動比率
- 当座比率
- 自己資本比率
- 固定比率
- 固定長期適合率
- 負債比率
14. 流動比率
14-1. 流動比率とは
**流動比率(Current Ratio)**とは、流動負債に対して、流動資産がどれくらいあるかを表す指標です。
短期的な支払能力を判断するために利用します。
14-2. 流動比率の公式
流動比率(%)
= 流動資産 ÷ 流動負債 × 100
14-3. 計算例
- 流動資産:600万円
- 流動負債:300万円
の場合、
流動比率
= 600 ÷ 300 × 100
= 200%
となります。
一般に流動比率が高いほど、短期的な支払余力が大きいと考えられます。
ただし、売れにくい在庫が多い場合などは、流動比率が高くても安心できるとは限りません。
15. 当座比率
15-1. 当座比率とは
**当座比率(Quick Ratio)**とは、流動負債に対して、当座資産がどれくらいあるかを表す指標です。
当座資産とは、現金や売掛金など、比較的短期間で現金化しやすい資産です。
15-2. 当座比率の公式
当座比率(%)
= 当座資産 ÷ 流動負債 × 100
15-3. 計算例
- 当座資産:240万円
- 流動負債:200万円
の場合、
当座比率
= 240 ÷ 200 × 100
= 120%
となります。
15-4. 流動比率との違い
流動比率では、商品などの棚卸資産も流動資産に含まれます。
一方、当座比率では、通常、棚卸資産を当座資産に含めません。
そのため、当座比率は流動比率よりも厳しい基準で短期的な支払能力を確認できます。
16. 自己資本比率
16-1. 自己資本比率とは
**自己資本比率(Equity Ratio)**とは、総資産に占める自己資本の割合です。
16-2. 自己資本比率の公式
自己資本比率(%)
= 自己資本 ÷ 総資産 × 100
16-3. 計算例
- 自己資本:600万円
- 総資産:1,000万円
の場合、
自己資本比率
= 600 ÷ 1,000 × 100
= 60%
となります。
自己資本比率が高いほど、一般に負債への依存度が低いと考えられます。
17. 固定比率
17-1. 固定比率とは
**固定比率(Fixed Assets to Equity Ratio)**とは、固定資産が自己資本に対してどれくらいあるかを表す指標です。
固定比率(%)
= 固定資産 ÷ 自己資本 × 100
例えば、
- 固定資産:400万円
- 自己資本:500万円
の場合、
固定比率
= 400 ÷ 500 × 100
= 80%
となります。
固定資産を返済義務のない自己資本でどれくらい賄えているかを確認するために利用します。
一般に、100%以下が一つの目安とされますが、適切な水準は業種などによって異なります。
18. 固定長期適合率
18-1. 固定長期適合率とは
固定長期適合率とは、固定資産を自己資本と固定負債でどれくらい賄えているかを表す指標です。
固定長期適合率(%)
= 固定資産 ÷ (自己資本 + 固定負債) × 100
例えば、
- 固定資産:600万円
- 自己資本:400万円
- 固定負債:400万円
の場合、
固定長期適合率
= 600 ÷ (400 + 400) × 100
= 75%
となります。
固定資産を長期的に安定した資金で賄えているかを判断する指標です。
19. 負債比率
19-1. 負債比率とは
**負債比率(Debt-to-Equity Ratio)**とは、自己資本に対する負債の割合を表す指標です。
負債比率(%)
= 負債 ÷ 自己資本 × 100
例えば、
- 負債:400万円
- 自己資本:600万円
の場合、
負債比率
= 400 ÷ 600 × 100
≒ 66.7%
となります。
一般に、負債比率が高いほど借入金などへの依存度が高いと考えられます。
20. 安全性指標の比較
| 指標 | 公式 | 主な目的 |
|---|---|---|
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 | 短期的な支払能力 |
| 当座比率 | 当座資産 ÷ 流動負債 | より厳密な短期支払能力 |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 | 財務の安定性 |
| 固定比率 | 固定資産 ÷ 自己資本 | 固定資産の資金調達状況 |
| 固定長期適合率 | 固定資産 ÷(自己資本+固定負債) | 長期資金とのバランス |
| 負債比率 | 負債 ÷ 自己資本 | 負債への依存度 |
※いずれも百分率で表す場合は100を掛けます。
21. 損益分析
21-1. 損益分析とは
損益分析とは、売上高・費用・利益の関係を分析し、利益を確保するための条件を明らかにすることです。
代表的な手法が損益分岐点分析です。
22. 固定費と変動費
22-1. 固定費とは
**固定費(Fixed Cost)**とは、一定の操業範囲内では、売上高や生産数量の増減に関係なく発生する費用です。
例えば、
- 店舗の家賃
- 固定給
- 設備の減価償却費
などがあります。
22-2. 変動費とは
**変動費(Variable Cost)**とは、売上高や生産数量の増減に応じて変化する費用です。
例えば、
- はちみつの原材料費
- 包装材料費
- 販売数量に比例する配送費
などがあります。
22-3. 固定費と変動費の比較
| 項目 | 固定費 | 変動費 |
|---|---|---|
| 売上・生産数量との関係 | 一定範囲では変わらない | 数量に応じて変化 |
| 例 | 家賃・固定給 | 原材料費・包装費 |
| 損益分岐点分析での役割 | 回収すべき費用 | 売上に比例する費用 |
23. 限界利益
23-1. 限界利益とは
**限界利益(Contribution Margin)**とは、売上高から変動費を差し引いた金額です。
限界利益 = 売上高 − 変動費
限界利益は、固定費の回収と利益の確保に充てられます。
23-2. 限界利益の計算例
はちみつ屋さんの年間売上高が1,000万円、変動費が600万円だったとします。
限界利益
= 1,000 − 600
= 400万円
となります。
24. 限界利益率
24-1. 限界利益率とは
**限界利益率(Contribution Margin Ratio)**とは、売上高に占める限界利益の割合です。
限界利益率
= 限界利益 ÷ 売上高
例えば、
限界利益率
= 400 ÷ 1,000
= 0.4
= 40%
となります。
25. 変動費率
25-1. 変動費率とは
**変動費率(Variable Cost Ratio)**とは、売上高に占める変動費の割合です。
変動費率
= 変動費 ÷ 売上高
例えば、
変動費率
= 600 ÷ 1,000
= 0.6
= 60%
となります。
25-2. 限界利益率との関係
限界利益率と変動費率には、次の関係があります。
限界利益率 = 1 − 変動費率
例えば、
1 − 0.6 = 0.4
となります。
26. 損益分岐点
26-1. 損益分岐点とは
**損益分岐点(Break-Even Point:BEP)**とは、売上高と費用が等しくなり、利益が0になる点です。
損益分岐点を超えると利益が発生し、下回ると損失が発生します。
26-2. 損益分岐点売上高の公式
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷ (1 − 変動費率)
限界利益率を利用すると、
損益分岐点売上高
= 固定費 ÷ 限界利益率
とも表せます。
27. 損益分岐点の計算例
はちみつ屋さんの経営状況が次のとおりだったとします。
- 固定費:300万円
- 変動費率:60%
損益分岐点売上高を求めます。
損益分岐点売上高
= 300 ÷ (1 − 0.6)
= 300 ÷ 0.4
= 750万円
したがって、売上高が750万円になると、利益が0になります。
27-1. 損益分岐点の確認
売上高750万円の場合、
変動費
= 750 × 0.6
= 450万円
総費用は、
総費用
= 固定費 + 変動費
= 300 + 450
= 750万円
となります。
売上高と総費用が一致しているため、利益は0です。
28. 損益分岐点比率
28-1. 損益分岐点比率とは
損益分岐点比率とは、実際の売上高に対する損益分岐点売上高の割合です。
損益分岐点比率(%)
= 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
28-2. 計算例
- 損益分岐点売上高:750万円
- 実際の売上高:1,000万円
の場合、
損益分岐点比率
= 750 ÷ 1,000 × 100
= 75%
となります。
損益分岐点比率が低いほど、一般に売上減少に対する余裕が大きいと考えられます。
29. 安全余裕率
29-1. 安全余裕率とは
**安全余裕率(Margin of Safety Ratio)**とは、売上高がどれくらい減少しても赤字にならないかを表す指標です。
安全余裕率(%)
= (実際の売上高 − 損益分岐点売上高)
÷ 実際の売上高 × 100
29-2. 計算例
安全余裕率
= (1,000 − 750) ÷ 1,000 × 100
= 25%
となります。
つまり、売上高が現在より25%減少すると、損益分岐点に到達します。
29-3. 損益分岐点比率との関係
安全余裕率 = 100% − 損益分岐点比率
今回の例では、
100% − 75% = 25%
となります。
30. 目標利益を達成する売上高
30-1. 目標利益売上高とは
企業は、赤字を回避するだけでなく、目標利益を達成する必要があります。
そのために必要な売上高は、次の式で計算できます。
目標利益達成売上高
= (固定費 + 目標利益) ÷ 限界利益率
30-2. 計算例
- 固定費:300万円
- 限界利益率:40%
- 目標利益:100万円
の場合、
目標利益達成売上高
= (300 + 100) ÷ 0.4
= 400 ÷ 0.4
= 1,000万円
となります。
31. 損益分岐点分析のまとめ
| 指標 | 公式 |
|---|---|
| 限界利益 | 売上高 − 変動費 |
| 限界利益率 | 限界利益 ÷ 売上高 |
| 変動費率 | 変動費 ÷ 売上高 |
| 損益分岐点売上高 | 固定費 ÷ 限界利益率 |
| 損益分岐点比率 | 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 |
| 安全余裕率 | 1 − 損益分岐点比率 |
| 目標利益達成売上高 | (固定費+目標利益)÷ 限界利益率 |
※比率を百分率で表す場合は100を掛けます。
32. 棚卸資産評価
32-1. 棚卸資産とは
**棚卸資産(Inventories)**とは、企業が販売や製造のために保有している資産です。
例えば、
- 商品
- 製品
- 原材料
- 仕掛品
などがあります。
はちみつ屋さんでは、販売用のはちみつ瓶や、製造に使用する原材料などが該当します。
32-2. 棚卸資産評価とは
棚卸資産評価とは、保有している棚卸資産の金額を計算することです。
同じ商品でも、仕入時期によって価格が異なる場合があります。
例えば、
- 1回目:100円で仕入れ
- 2回目:120円で仕入れ
- 3回目:140円で仕入れ
という場合、どの商品が売れたと考えるかによって、売上原価や期末棚卸資産の金額が変わります。
33. 売上原価の計算
33-1. 売上原価とは
**売上原価(Cost of Goods Sold)**とは、販売した商品に対応する仕入原価などです。
商品売買業における基本的な計算式は次のとおりです。
売上原価
= 期首商品棚卸高
+ 当期商品仕入高
− 期末商品棚卸高
33-2. 計算例
- 期首商品棚卸高:100万円
- 当期商品仕入高:500万円
- 期末商品棚卸高:150万円
の場合、
売上原価
= 100 + 500 − 150
= 450万円
となります。
34. 先入先出法
34-1. 先入先出法とは
**先入先出法(FIFO:First In, First Out)**とは、先に仕入れた商品から先に払い出されたと仮定して、棚卸資産を評価する方法です。
34-2. 計算例
はちみつを次のように仕入れたとします。
| 仕入順 | 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 1回目 | 10個 | 100円 | 1,000円 |
| 2回目 | 10個 | 120円 | 1,200円 |
| 3回目 | 10個 | 140円 | 1,400円 |
合計30個、3,600円です。
このうち20個を販売した場合を考えます。
先入先出法では、先に仕入れた商品から販売されたと考えます。
1回目の10個:100円 × 10 = 1,000円
2回目の10個:120円 × 10 = 1,200円
したがって、
売上原価
= 1,000 + 1,200
= 2,200円
となります。
残った10個は3回目に仕入れた商品なので、
期末棚卸資産
= 140 × 10
= 1,400円
となります。
35. 移動平均法
35-1. 移動平均法とは
**移動平均法(Moving Average Method)**とは、商品を仕入れるたびに平均単価を計算し直す方法です。
35-2. 計算例
最初に10個を100円で仕入れたとします。
10個 × 100円 = 1,000円
次に10個を120円で仕入れます。
この時点の平均単価は、
(1,000 + 1,200) ÷ 20
= 110円
です。
さらに10個を140円で仕入れます。
(2,200 + 1,400) ÷ 30
= 120円
となります。
この時点で20個販売した場合、
売上原価
= 120 × 20
= 2,400円
となります。
残り10個の評価額は、
期末棚卸資産
= 120 × 10
= 1,200円
となります。
※この例では、すべての仕入れが終わった後に販売しています。
36. 総平均法
36-1. 総平均法とは
**総平均法(Weighted Average Cost Method)**とは、一定期間の仕入金額と数量を合計し、平均単価を計算する方法です。
平均単価
= (期首棚卸金額 + 当期仕入金額)
÷ (期首棚卸数量 + 当期仕入数量)
36-2. 計算例
先ほどの仕入データを利用します。
| 数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|
| 10個 | 100円 | 1,000円 |
| 10個 | 120円 | 1,200円 |
| 10個 | 140円 | 1,400円 |
合計は、
- 数量:30個
- 金額:3,600円
です。
平均単価
= 3,600 ÷ 30
= 120円
20個販売した場合、
売上原価
= 120 × 20
= 2,400円
期末棚卸資産は、
120 × 10 = 1,200円
となります。
37. 最終仕入原価法
37-1. 最終仕入原価法とは
最終仕入原価法とは、期末に最も近い時点の仕入単価を利用して、期末棚卸資産を評価する方法です。
37-2. 計算例
最後の仕入単価が140円で、期末在庫が10個の場合、
期末棚卸資産
= 140 × 10
= 1,400円
となります。
なお、最終仕入原価法は税務上の評価方法として扱われることがありますが、一般的な企業会計上の評価方法とは区別して理解する必要があります。
38. 棚卸資産評価方法の比較
| 方法 | 考え方 |
|---|---|
| 先入先出法 | 先に仕入れたものから払い出す |
| 移動平均法 | 仕入れのたびに平均単価を更新 |
| 総平均法 | 一定期間の平均単価を計算 |
| 最終仕入原価法 | 最後の仕入単価で期末在庫を評価 |
39. 棚卸資産の低価法
39-1. 低価法とは
**低価法(Lower of Cost or Market)**とは、棚卸資産の取得原価と、一定の基準に基づく時価などを比較して評価する考え方です。
日本の企業会計では、通常の販売目的で保有する棚卸資産について、収益性が低下した場合に帳簿価額を正味売却価額まで切り下げる処理が基本となります。
39-2. 正味売却価額とは
**正味売却価額(Net Realizable Value)**とは、見込販売価額から見積追加製造原価や見積販売直接経費を差し引いた金額です。
例えば、
- 商品の取得原価:1,000円
- 見込販売価額:900円
- 販売に必要な追加費用:100円
の場合、
正味売却価額
= 900 − 100
= 800円
となります。
取得原価1,000円に対して正味売却価額が800円であるため、収益性の低下を反映して評価額を切り下げます。
40. 減価償却
40-1. 減価償却とは
**減価償却(Depreciation)**とは、建物や機械設備などの取得原価を、使用可能な期間にわたって費用として配分する会計処理です。
例えば、はちみつ屋さんが製造機械を100万円で購入したとします。
この機械を5年間利用する場合、購入した年だけに100万円の費用を計上するのではなく、利用期間にわたって費用を配分する考え方です。
40-2. 減価償却の対象
代表的な減価償却資産には、
- 建物
- 機械設備
- 車両
- 工具・器具・備品
などがあります。
一方、土地は通常、使用によって価値が減少する資産として扱わないため、減価償却の対象になりません。
41. 定額法
41-1. 定額法とは
**定額法(Straight-Line Method)**とは、原則として毎期同じ金額を減価償却費として計上する方法です。
41-2. 定額法の公式
残存価額を考慮する基本的なモデルでは、
年間減価償却費
= (取得原価 − 残存価額) ÷ 耐用年数
となります。
※実際の税務上の計算方法は、取得時期や資産の種類などによって異なります。
41-3. 計算例
はちみつ屋さんが製造機械を購入しました。
- 取得原価:100万円
- 耐用年数:5年
- 残存価額:0円
この場合、
年間減価償却費
= (100万円 − 0円) ÷ 5年
= 20万円
となります。
41-4. 定額法の償却イメージ
| 年度 | 減価償却費 | 期末帳簿価額 |
|---|---|---|
| 購入時 | — | 100万円 |
| 1年目 | 20万円 | 80万円 |
| 2年目 | 20万円 | 60万円 |
| 3年目 | 20万円 | 40万円 |
| 4年目 | 20万円 | 20万円 |
| 5年目 | 20万円 | 0万円 |
※残存価額を0円とした単純化した例です。
42. 定率法
42-1. 定率法とは
**定率法(Declining Balance Method)**とは、原則として期首の未償却残高に一定の償却率を掛けて減価償却費を計算する方法です。
定額法とは異なり、初期の減価償却費が大きくなりやすい特徴があります。
42-2. 定率法の基本式
減価償却費
= 期首未償却残高 × 償却率
42-3. 計算例
次の条件で計算します。
- 取得原価:100万円
- 償却率:40%
1年目
100 × 0.4 = 40万円
期末帳簿価額は、
100 − 40 = 60万円
です。
2年目
60 × 0.4 = 24万円
期末帳簿価額は、
60 − 24 = 36万円
です。
3年目
36 × 0.4 = 14.4万円
期末帳簿価額は、
36 − 14.4 = 21.6万円
となります。
42-4. 定率法の注意点
この計算は、定率法の仕組みを理解するための単純化した例です。
実際の税務上の定率法では、償却保証額や改定償却率などのルールが適用される場合があります。
43. 定額法と定率法の違い
| 項目 | 定額法 | 定率法 |
|---|---|---|
| 計算方法 | 毎期一定額 | 未償却残高に一定率 |
| 初期の償却費 | 原則一定 | 大きくなりやすい |
| 後半の償却費 | 原則一定 | 小さくなりやすい |
| 特徴 | 計算が比較的簡単 | 初期に費用を多く配分 |
44. 減価償却累計額
44-1. 減価償却累計額とは
**減価償却累計額(Accumulated Depreciation)**とは、これまでに計上した減価償却費の累計額です。
例えば、
- 取得原価:100万円
- 毎年の減価償却費:20万円
の場合、3年経過時点の減価償却累計額は、
20 × 3 = 60万円
です。
44-2. 帳簿価額の計算
帳簿価額
= 取得原価 − 減価償却累計額
今回の例では、
100 − 60 = 40万円
となります。
45. 減価償却とキャッシュフロー
減価償却を理解するうえで、重要なポイントがあります。
それは、減価償却費を計上すること自体は、現金の支出を伴わないという点です。
例えば、100万円の機械を現金で購入した場合、
- 購入時:100万円の現金支出
- その後:毎期の減価償却費を計上
という流れになります。
減価償却費を計上するたびに、追加で現金を支払うわけではありません。
46. 応用情報技術者試験で重要な公式一覧
財務諸表分析
| 指標 | 公式 |
|---|---|
| ROE | 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100 |
| ROA | 利益 ÷ 総資産 × 100 |
| ROI | 投資利益 ÷ 投資額 × 100 |
| 流動比率 | 流動資産 ÷ 流動負債 × 100 |
| 当座比率 | 当座資産 ÷ 流動負債 × 100 |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 × 100 |
| 固定比率 | 固定資産 ÷ 自己資本 × 100 |
| 固定長期適合率 | 固定資産 ÷(自己資本+固定負債)× 100 |
損益分析
| 指標 | 公式 |
|---|---|
| 限界利益 | 売上高 − 変動費 |
| 限界利益率 | 限界利益 ÷ 売上高 |
| 損益分岐点売上高 | 固定費 ÷ 限界利益率 |
| 損益分岐点比率 | 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 |
| 安全余裕率 | 1 − 損益分岐点比率 |
| 目標利益達成売上高 | (固定費+目標利益)÷ 限界利益率 |
棚卸資産評価
| 項目 | 計算方法 |
|---|---|
| 売上原価 | 期首棚卸高+当期仕入高−期末棚卸高 |
| 総平均単価 | 仕入金額などの合計 ÷ 数量の合計 |
| 先入先出法 | 先に仕入れたものから払い出したと仮定 |
減価償却
| 方法 | 公式 |
|---|---|
| 定額法 | (取得原価−残存価額)÷ 耐用年数 |
| 定率法 | 期首未償却残高 × 償却率 |
| 帳簿価額 | 取得原価−減価償却累計額 |
47. 練習問題
問題1:ROE
ある企業の当期純利益が200万円、自己資本が1,000万円の場合、ROEはいくらでしょうか。
解答
ROE
= 200 ÷ 1,000 × 100
= 20%
正解:20%
問題2:流動比率
流動資産が800万円、流動負債が400万円の場合、流動比率はいくらでしょうか。
解答
流動比率
= 800 ÷ 400 × 100
= 200%
正解:200%
問題3:損益分岐点
固定費が400万円、変動費率が60%の場合、損益分岐点売上高はいくらでしょうか。
解答
損益分岐点売上高
= 400 ÷ (1 − 0.6)
= 400 ÷ 0.4
= 1,000万円
正解:1,000万円
問題4:安全余裕率
実際の売上高が1,500万円、損益分岐点売上高が1,200万円の場合、安全余裕率はいくらでしょうか。
解答
安全余裕率
= (1,500 − 1,200) ÷ 1,500 × 100
= 20%
正解:20%
問題5:先入先出法
次のように商品を仕入れました。
- 10個を100円で仕入れ
- 10個を150円で仕入れ
このうち15個を販売した場合、先入先出法による売上原価はいくらでしょうか。
解答
100円 × 10個 = 1,000円
150円 × 5個 = 750円
売上原価 = 1,750円
正解:1,750円
問題6:定額法
取得原価が300万円、耐用年数が5年、残存価額が0円の場合、年間減価償却費はいくらでしょうか。
解答
年間減価償却費
= 300 ÷ 5
= 60万円
正解:60万円
問題7:定率法
取得原価が200万円、償却率が30%の場合、1年目の減価償却費はいくらでしょうか。
解答
200 × 0.3 = 60万円
正解:60万円
まとめ
今回の記事では、企業会計の基本を学びました。
特に重要なのは、財務諸表・収益性・安全性・損益分岐点・資産評価の関係を理解することです。
- 貸借対照表(B/S):企業の財政状態を表す
- 損益計算書(P/L):一定期間の経営成績を表す
- キャッシュフロー計算書(C/F):現金の増減を表す
- ROE:自己資本に対する収益性
- ROA:総資産に対する収益性
- ROI:投資額に対する収益性
- 流動比率:短期的な支払能力
- 自己資本比率:財務の安定性
- 損益分岐点:利益が0になる売上高
- 限界利益:売上高から変動費を差し引いた金額
- 棚卸資産評価:在庫の金額を計算する
- 減価償却:固定資産の取得原価を利用期間に配分する
🍯 はちみつメモ
企業会計は「会社のお金の状態を見える化する仕組み」!
はちみつ屋さんで考えると、
- 今どれくらい財産がある? → 貸借対照表
- 今年はいくら儲かった? → 損益計算書
- 現金は増えた?減った? → キャッシュフロー計算書
- 効率よく利益を出せている? → ROE・ROA・ROI
- 借金を返せそう? → 安全性指標
- いくら売れば黒字になる? → 損益分岐点
- 売れ残った商品の価値はいくら? → 棚卸資産評価
- 購入した機械の費用をどう分ける? → 減価償却
という関係なんだ。
応用情報技術者試験では、特に損益分岐点の計算、ROE・ROIの計算、先入先出法、定額法・定率法をしっかり押さえておこう!